なごやかに すこやかに 遊和 yuwa 体の健康は「置き薬で」 心の健康は「遊和」で・・・

この人に聞きたい 「老化を受け入れて『幸齢者』になろう」 国際医療福祉大学特任教授・精神科医 和田秀樹さん

著書『80歳の壁』で話題の和田秀樹先生。書店では数々の著書が並び、70~80代向けの健康法や生き方をまとめた書籍はベストセラーとなっています。 取材日も朝5時から執筆活動をされ、ご多忙な中お時間をいただきました。高齢者専門の精神科医として6000人以上の患者さんを診てきた先生のお話はとても勉強になりました。


和田秀樹さん

医師を志した経緯

私は学生時代から映画監督になるのが夢で、その資金を貯めたくて医師になりました。立派な動機ではなかったのですが、素晴らしい師匠の先生に巡り会い、環境も良かったおかげで、いい医者になれたと思っています(笑)。

高齢者専門の精神科医となり、35年近く臨床医として診察や治療に携わってきました。患者さんは生きた教科書で、医学書や論文の知識だけでは通用しません。世間で言われる高齢者の姿と、実際の姿は違うことを知りました。

精神科医は患者さんの話に耳を傾けるのが仕事ですが、患者さんの人生に触れると一人ひとりにドラマがあり、人生に優劣はないのだと気づかされます。この仕事に就いて良かったと思っています。


80歳からは「幸齢者」

私は80歳を超えた高齢者を「幸齢者」と呼んでいます。医者は病気の人しか診ていないので、元気で楽しそうに生きている「幸齢者」を知りません。体のどこかが悪くて神経質になっている人、検査結果に一喜一憂する人、食べたい物を我慢している人たちばかりを診ているのです。

私も医者ですが、患者さんの高齢者も元気な高齢者もたくさん診てきました。これは私が長年勤めていた浴風会病院のおかげもあります。ここは元々、関東大震災で身寄りを亡くした高齢者の救護施設として設立された老人ホームに併設されていました。老年医学の研究も行われ、毎年100名ほどのご遺体を解剖させていただく中で、老化がどういうことなのか分かってきました。

たとえば、85歳を過ぎて体のどこにもがんのない人はいません。日本人の死因は3分の1ががんなので、残りの人はがんがあっても気づいていない「知らぬが仏」ということです。

高齢者のがんは進行が遅く、生活に支障がなければ無理に手術しない方が幸せであるという印象をもっています。体力が低下して身体機能も落ちやすいからです。いろんなことを我慢してまで長生きする必要があるのかどうかは、本人の気持ちの問題ともいえます。

...続きは遊和45号でご覧ください。

和田秀樹さん

PROFILE

和田 秀樹(わだ ひでき)PROFILE

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。 東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、「和田秀樹こころと体のクリニック」を開院。高齢者専門の精神科医として、30年以上に渡って高齢者医療の現場に携わっている。
『80歳の壁』(幻冬舎)、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社)、『70代で死ぬ人、80代でも元気な人』(マガジンハウス)、『70歳からの老けない生き方』(リベラル社)、『老いが怖くなくなる本』(小学館)、『新しい老い方の教科書』(永岡書店)など著書多数。

ページトップへ