なごやかに すこやかに 遊和 yuwa 体の健康は「置き薬で」 心の健康は「遊和」で・・・

この人に聞きたい 「『尿トラブル』は健康を見直すサイン」 順天堂大学大学院・泌尿器科医・医学博士 堀江重郎さん

今回は泌尿器科学や抗加齢医学をリードする堀江重郎先生にお話を伺いました。なかなか人には相談しづらいけれど、生活の質を低下させる「尿トラブル」。遊和では初めて取り上げる内容ですが、先生の解説は分かりやすく、すぐに実践したくなることがたくさんありました。


堀江重郎さん

泌尿器科の医師になる

私はもともと文系の学生で、新聞記者のような仕事に就きたいと考えていました。医師になろうと思ったきっかけは母親の病気です。高校三年生のときに母親が乳がんだと分かりました。

当時は「がん=死」と考えられていたのでショックでした。今でいうセカンドオピニオンを受け、当時では珍しく超音波機器をもつというアメリカ帰りの先生がいると聞きつけて受診しました。その結果「水が溜まっているだけだ」と診断され、水を抜いたら治ってしまいました。私も家族も大変感激し、「これだけ人を幸せにできる仕事は素晴らしい」と感じて医師になりたいと思ったのです。

医学としては精神科に興味がありましたが、救急医療に携わって人工透析を担当する中で当時の最先端医療だった腎臓移植に関わりたいと考え、泌尿器科に進みました。

アメリカに留学して腎臓の研究と移植手術に携わり、帰国後はがんやウイルス、遺伝子、ロボット手術などを学んで現在に至ります。


膀胱は「しなやかさ」が重要

尿は腎臓で血液からつくられて膀胱にためられ、膀胱の容量が一定量になると尿意が起こるようになっています。膀胱の容量レベルと尿意の起こるレベルには少しゆとりがあるため、尿意が起きた瞬間にトイレに行かなくても我慢ができるのです。

膀胱は筋肉でできた袋ですが、この筋肉が硬くなると頻尿や尿失禁、残尿感といった尿トラブルを引き起こします。その大きな要因が「膀胱の血流低下」です。

血流と筋肉には密接な関係があり、膀胱に流れる血液が少なくなると膀胱の筋肉はしなやかさを失って硬くなります。柔らかくてふくらむゴム風船が、硬くてふくらみにくい紙風船になるようなものです。

血管でつくられる一酸化窒素(NO)というガスが減ることも膀胱の筋肉がしなやかさを失う一因です。

NOは筋肉を柔軟にする働きがありますが、加齢や生活習慣病があると十分につくられません。実際に糖尿病や高血圧の人は尿トラブルが起こりやすいと分かっています。

さらに、呼吸や食事からエネルギーを生み出す際に体内で発生する活性酸素は、細胞をサビつかせたり血管の機能を低下させたりしてNOを減らしてしまいます。

...続きは遊和43号でご覧ください。

今津嘉宏さん

PROFILE

堀江 重郎(ほりえ しげお)

順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科教授。1960年生まれ。東京大学医学部卒業。日米で医師免許を取得し、救急医学、泌尿器科学、腎臓学、分子生物学の研鑽を積む。帝京大学医学部主任教授を経て現職。
精度の高い泌尿器手術を行う一方、学際的なアプローチを男性の健康医学に導入、日本初のメンズヘルス外来を開設。(一社)日本メンズヘルス医学会理事長。
主な著書に「ヤル気が出る!最強の男性医療」(文藝春秋)、「寿命の9割は「尿」で決まる」(SBクリエイティブ)、「LOH症候群」(KADOKAWA)などがある。

ページトップへ