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この人に聞きたい 「『睡眠第一!』で脳も体も超元気」 小児科医・医学博士 成田奈緒子さん

今回は小児科の医師であり、子どもの脳の発達について研究され、睡眠の大切さを説いておられる成田奈緒子先生にお話を伺いました。「知らないことを勉強するのが楽しい」ということで、ご専門の他にも江戸の歴史や文化に興味を抱いて勉強されている、好奇心旺盛でとてもエネルギッシュな先生でした。


成田奈緒子さん

医師&研究者として

私は昔から生き物に興味があり、幼い頃は虫や草をずっと眺めて過ごしていました。図鑑が宝物で、人とはあまりしゃべらない無口な子どもでした。そんな私が医師になったのは小児科医である父の勧めもありますが、究極に高度な生物である人間の体内で起こっていることに関心があったからです。

私は小児科医としての臨床経験をもとに脳科学の研究にも取り組んできましたが、近年心身を病む人が多い背景には現代社会が睡眠をおろそかにしていることが関わっていると思っています。

診察では患者さんが病気になった原因を探って生活改善のアドバイスをしますが、患者さんが変わっていく様子は興味深いです。薬や検査よりも生活環境が健康に与える影響は大きく、特に睡眠が最も大切です。

実は日本は世界一睡眠時間が短い国です。「自分は5時間も寝れば大丈夫だ」と思い込んでいる人もいますが、脳が十分に回復して覚醒するためには7時間は必要です。

深刻な子どもの睡眠不足

人間は太陽が出ているときに活動する「昼行性動物」です。朝は1日を元気に活動したり、自律神経をうまく働かせたりするホルモンがたくさん分泌されるため、夜に寝て朝にしっかりと起きる生活を送らないと、体と心が元気でいられません。

私が気になっているのは、今の子どもたちがあまりにも寝てなさすぎることです。親御さんは「うちは早寝なので、夜10時までに寝かせています」と自信満々に言われますが、私からすると子どもは8時に寝るもの。けれど、「その時間はまだ家にも帰っていませんよ」と言われるので、唖然としています。

小児科学の教科書には、小学生は平均10時間、中学生は平均9時間の睡眠が必要だと記されています。今の子どもたちは睡眠が2時間ほど不足しているのです。

睡眠は脳や心に影響する

人間の機能の大部分は脳が担っているので、子どもの発達は脳の発達とほぼ同義だと考えられます。脳は年齢によって成長する時期が異なり、私は脳の発達を3パートに分けて説明しています。

生まれてから5歳頃までに成長する「からだの脳」は、動物が共通して持っている生きるための脳です。次に、言語や思考など人間らしさを司る「おりこうさんの脳」が18歳頃までに成長します。最後に発達する「こころの脳」は最も高度な部分で、ここが育つことで自分の行動を周囲に合わせて判断できるようになっていきます。

人間は「おりこうさんの脳」が発達した動物ですが、脳を健全に成長させるためには土台である「からだの脳」をしっかり育てることが重要です。そうでないうちから熱心に幼児教育をしていても、バランスよく脳が育たないのです。

「からだの脳」は寝る・起きる・食べるといった生活習慣をしっかり確立させることで育ちます。睡眠時間が不足している今の子どもたちは「からだの脳」が十分に育っていない可能性があり、そのことが不登校や発達障害、不安障害などにつながっていると考えています…

...続きは遊和34号でご覧ください。

成田奈緒子さん

PROFILE

成田 奈緒子(なりた なおこ)

小児科医、医学博士、文教大学教育学部教授。神戸大学医学部卒業。
1994~1998年まで米国セントルイス・ワシントン大学医学部留学。
2005年より文教大学教育学部特別支援教育専修准教授、2009年より現職。文部科学省「リズム遊びで早起き元気脳」実行委員長。
子育てを応援する専門家によるワークショップ「子育て科学アクシス」代表。
著書に「子どもの脳を発達させるペアレンティング・トレーニング」(合同出版)、「8歳までの子どもの脳にやっていいこと悪いこと」(PHP研究所)、「『睡眠第一』ですべてうまくいく」(双葉舎)、「早起きリズムで脳を育てる」(芽ばえ社)ほか多数。

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