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この人に聞きたい 「バイ菌・常在菌・腸内菌、すべての菌に意味がある」 医師・医学博士 藤田紘一郎さん

大ヒット著書『腸内革命』などで知られる感染免疫学の第一人者。今回は御徒町にある藤田先生の研究室で取材させていただきました。背が高くて背筋も伸び、年齢を感じさせないダンディな先生で、「カイチュウ談義」やご自身の生い立ちなど、興味深いお話をたくさん伺いました。


藤田紘一郎さん

熱帯病調査団として

私は医学部の学生の頃に柔道部のキャプテンを務めていて、多くの部員が整形外科の医者になったので、私も整形外科医になりました。

ある日、熱帯病調査団の教授に「柔道部員の中から熱帯病調査団の荷物持ちをしてくれる人を探している」と声をかけられ、私がそれを引き受けました。これが運の尽きでした。「お前は不器用だから整形外科には向かない、熱帯病の医者にしかなれないだろう」と教授に言われたのもあって、この研究に進みさまざまな地域で調査をしました。

インドネシアでの調査では、子どもたちはうんちが流れている川で遊んでいるのにとても元気で、アトピーや喘息などがある人はいませんでした。一方、日本では1963年に栃木県日光市でスギ花粉症の第一例が出てから、患者がワーッと増えていきました。

どうしてだろうと思って毎年インドネシアで調査をしたところ、住民のお腹の中に回虫などの寄生虫がいることが分かりました。私が子どもの頃はみんなお腹に回虫がいたし、遊び道具のスギ鉄砲を作るために花粉まみれになっても、スギ花粉症になる人はいませんでした。

自分の体を使って検証

私は回虫がアレルギーを抑えているのではないかと考え、この寄生虫からアレルギーを抑える物質を取り出そうとしました。他の研究者や教授からは「つまらない研究はやめろ」と言われましたが、こっそり続けた結果、アレルギーを抑える物質を発見したんです。この研究は世界的に有名な科学雑誌「サイエンス」に掲載され、ヨーロッパでは教科書にも載っていますが、当時の日本ではまったく相手にされませんでした。

そこで、私は自分の体を使って実験をすることにしました。寄生虫の一種であるサナダ虫に〝キヨミちゃん〟と名づけてお腹の中で飼い、アレルギーにならないことを証明しようとしたんです。キヨミちゃんは宿主である私のお腹でしか生きられないので、私が病気にならないように免疫系に働きかけてアレルギーを防ぐ物質を出しています。

これを実証するのに何十年もかかりました。医学界では変な男だというレッテルを貼られましたが、このことを書いた本はベストセラーになりました…

...続きは遊和31号でご覧ください。

藤田紘一郎さん

PROFILE

藤田 紘一郎(ふじた こういちろう)

 1939年旧満州・ハルピン生まれ。東京医科歯科大学名誉教授、医学博士。東京医科歯科大学医学部卒業。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。専門は寄生虫学と感染免疫学、熱帯医学。免疫、伝染病研究の第一人者でありながらエッセイストとしても活躍。
 著書に『脳はバカ、腸はかしこい』(三五館)、 『「大人のアレルギー」は腸で治す』(大和書房)、 『人の命は腸が9割~大切な腸を病気から守る30の方法』(ワニブックス)、 『腸内革命~腸は、第二の脳である』(海竜社)、 『腸内フローラ 医者いらずの驚異の力』(宝島社)、 『がんになりたくなければ「長生きエンジン」に変えなさい!』(かんき出版)など多数。

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