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この人に聞きたい 「体内時計」を整えて健やかに生きる 東京女子医科大学名誉教授・医学博士 大塚邦明さん

今回は時間医学の第一人者である、大塚邦明先生の登場です。先生が院長を務める戸塚ロイヤルクリニックでインタビューさせていただきました。穏やかでにこやかな先生。お話の内容は大変興味深く、時間を忘れるほど引き込まれてしまいました。


大塚邦明さん

体の時間を研究

私が幼い頃から、母には「脈なし病」という奇病がありました。時折、意識を失うような狭心痛を繰り返していましたが、診てくれる医師はいませんでした。私が医師になったのは、そんな母の病気を治したかったからです。

大学卒業後に勤めた病院には、国内第一号となる24時間心電図を測る機械(ホルター心電図)があり、昼は元気なのに夜だけ胸が痛いと訴えるような患者さんが受診しにきました。他の病院では原因が分からず仮病扱いされていましたが、検査によって夜のある特定の時間にだけ重い不整脈や狭心症を起こしていることが分かったのです。

このことを通して、「時間」を念頭におかないと分からない病気があることを知り、時間を考慮した医学の必要性を感じて研究を開始することにしました。ちょうどこの頃、海外では脳に生体リズムを生み出す時計があることが発見されましたが、日本ではこの分野を研究している人はほとんどいませんでした。

24時間、90分の基本リズム

時が経つと決まった時間にお腹がすいてきます。夜になると同じような時刻に眠くなります。不思議だと思いませんか。

例えば、朝7時に起きると夜7時には眠くならず、15時間経った夜10時頃から眠くなってくるはずです。実は、私たちの体は朝の光を浴びた15時間後に眠り時計のスイッチが入り、眠くなるようになっているのです。

体内には24時間の基本のリズムがあり、自律神経やホルモンの分泌は一日の中で変動し、体温や血圧、心拍数も昼は高く、夜は低くなっています。

このリズムと並んで、90分周期の基本のリズムもあります。勉強などの頭を使った作業に集中して取り組むことができるのは90分が限度で、口が寂しくてお菓子をつまんだり、のどが渇いて水を飲んだりするのもこの周期になっています。

睡眠中も深い眠りと浅い眠りを90分ごとに繰り返しているので、多くの人は睡眠時間が6時間か7時間半という周期になっています。このように、生体リズムは私たちの生命活動と深い関係があります…

...続きは遊和26号でご覧ください。

大塚邦明さん

PROFILE

大塚 邦明(おおつか くにあき)

1948年、愛媛県生まれ。医学博士。循環器内科学、時間医学・老年医学が専門。
九州大学医学部卒業。九州大学温泉治療学研究所助手、高知医科大学老年病学教室助手を経て、1998年、東京女子医科大学東医療センター内科教授。2008年、同センター病院長を経た後、2013年東京女子医科大学名誉教授。時間医学老年総合内科(寄附臨床研究部門)を主催。2015年4月より東京女子医科大学 特定関連施設 戸塚ロイヤルクリニック院長。
日本時間生物学会会長、日本自律神経学会会長、日本循環器心身医学会会長を歴任。時間生物学世界大会を主催。
著書に『病気にならないための時間医学』(ミシマ社)、『100歳を可能にする時間医学』(NTT出版)、『体内時計の謎に迫る』(技術評論社)、『眠りと体内時計を科学する』(春秋社)など多数。

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