人体を構成している臓器にはそれぞれ役割があり、互いに連携をとりながら働いています。古くから東洋医学では臓器の相関関係が健康状態を左右すると考えてきましたが、近年になり現代医学でも注目されるようになっています。今回は脳と腸の関係について解説します。
腸は第二の脳
脳には物事を考える・運動をコントロールする・生命を維持するなどの働きがあり、全身に指令を出す司令塔の役割をしています。まるで脳がすべてを決めているようにも思えますが、全身に張りめぐらされた神経のネットワークを介して臓器や細胞と連絡を取り合うことで機能しています。
ここ数年は脳と腸のやりとりが親密だと関心を集めています。
以前まで単なる消化管だと考えられていた腸は、現在では免疫系の中心であると知られるようになってきました。
腸にはおよそ1億個もの神経細胞が存在しています。これは電気信号を発して情報のやりとりをする細胞のことで、脳の次に多い数です。また、脳からの指令を受けずに機能する独自のネットワークをもっていて、たくさんの神経で脳とつながっています。腸に運ばれてきた食べ物や異物に関する情報、免疫系への指令は脳を介さずに腸から全身へと出されることが分かっています。こうしたことから、腸は「第二の脳」と呼ばれています。
脳腸相関とは
腸の調子が悪くてお腹の張り・便秘・下痢などがあると、気分が沈んだりイライラしたりします。これは腸の不調が神経ネットワークによって脳に伝わり、気分に影響したものだと考えられます。
一方で、脳がストレスや緊張を感じるとお腹の調子が悪くなるときもあります。このように、脳と腸が互いに影響し合うことを「脳腸相関」といいます。
ストレスが長く続くと、腸のぜん動運動が乱れて下痢と便秘を繰り返す過敏性腸症候群や、腸に炎症が起こる潰瘍性大腸炎といった病気を発症しやすくなります。これらの病状には腸の調子をよくする食生活も大切ですが、脳が感じるストレスを減らすことも重要だといえるでしょう。