もし乳がんとわかったら

乳がん治療の病院選びのポイントとしては、日本乳癌学会が認める乳腺専門医がいるというのが一つの目安になるかと思います。
いずれにしても、手術のやり方は同じ術式名であっても、施設によってかなりの違いがありますので、「こんなはずではなかった」と 後悔しないためにも、ご本人とご家族でしっかり調べて、時にはセカンドオピニオンを活用しつつ、納得がいくまで担当医の話を聞く ことです。

乳房切除以外に選択肢がなかったり、乳房再建についての説明がない場合は、自分から質問してみるという勇気も必要かもしれません。
それから、「乳房と命をひきかえ」と思っている方もいるようですが、乳がん手術で局所をどんなに大きく切除しても、それによって寿命が 改善されるわけではありません。
乳がんの死亡原因は、肺や肝臓など他の臓器に転移することですので、局所治療としての手術は必要最小限の切除で十分ということです。
たとえば、虫歯ができたからといって、すぐに抜いたりせず、悪いところだけ削るのと同じことです。

「乳がん」を他人事としないために

※若い世代も乳がんに関心を!
 女性の全年齢層では胃や大腸のがんで亡くなる方が多いのですが、30歳から64歳の壮年層では  乳がんが死亡原因の第1位となっています。
また若い年代の乳がん死亡率が年々上昇しており、20代でもなることもあり、若いときから関心をもつことが大切です。

術後注意すべきこと

 乳がん術後の後遺症として、手術した側の腕が腫れるリンパ浮腫があります。
私も研修医時代に「リンパ浮腫は一度なったら治らない」と教えられ、そう信じ込んでいたものです。 患者さんを前に「ごめんね。治す方法がなくて」と途方にくれるだけの自分がやりきれず、独学でつまづきながらもたどり着いたのが 圧迫療法と「リンパドレナージ」(皮下によどんだ高たんぱくの体液を深部のリンパ管に向かって手のひらで優しく流す方法)で 改善できる!という事実でした。

よく「むくみ」といいますが、たとえば飲み過ぎた翌朝、顔や手足が腫れぼったい感じになるのは余分な水がたまっているだけのことで、 夕方ごろには治ってしまいます。
「リンパ浮腫」は手術でリンパ節を切除したためにリンパのネットワークが破たんし、高濃度のタンパクを含む体液が リンパ管に回収されないまま組織のすきまにたまった状態ですので、単純な「むくみ」とは全く別の状態です。
また、リンパドレナージとマッサージを混同する方が多いのですが、これは大きな間違い。術後の腕にマッサージを受けたのが きっかけでリンパ浮腫を発症した患者さんは少なくありません。

治療の主役は圧迫療法で、二種類のツールとして弾性着衣と弾性包帯があります。
手術当初からリンパ浮腫に対する知識を身につけて早期に異常を発見し、早期治療を始めれば必ずしも包帯をぐるぐる巻いて 不自由な生活を強いられる必要はなく、弾性着衣(スリーブやグローブと呼ばれています)を装着することが最も効果的な 治療となります。
これらはこれまで自費負担でしたが、私が手掛けた乳癌学会の研究班でまとめた実態調査結果を厚生労働省に提出し、 保険適応を申請したところ、2008年度から保険適用になりました。

どの時点でリンパ浮腫と判断するかですが、研究班では手術した側の腕が対側より1cm以上太ければリンパ浮腫と みなすことにしました。そして本来は左右差よりも術前と術後で同じ場所を比較するほうが、より早期の発見につながるので 理想的です。
1cmは厳しいと思われるかもしれませんが、病気は早期発見、早期治療が原則で、これに基づいて日ごろから発症予防の ライフスタイルを心がけていれば、リンパ浮腫は恐れるに足りません。

リンパ浮腫予防のために気をつける事は、太らない、リスクのある側の腕を酷使しない、血圧計や駆血帯できつく締めない、 傷ややけど、虫さされを防ぐ、などです。

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