安保徹さん

この人に聞きたい 第4回「病は気から」を科学する


 

  安保 徹さん


  新潟大学大学院医歯学
  総合研究科教授

免疫学の権威である安保徹教授の著書には「体温免疫学」「医療が病をつくる」などがありますが、 中でも「免疫革命」はベストセラーとなり、世間に免疫ブームを引き起こすきっかけとなりました。 病気の原因を解明した「自律神経の白血球支配」は、これまで曖昧であった心と体の関係に医学的な 裏づけを与え、病気の治癒に確かな方向性を示しています。

お忙しい中、教鞭をとられる新潟大学でお話を伺いました。 教授室の床には資料が至るところに置いてあり、 たくさんの研究や仕事を抱えておられる様子が伺えました。

病気が治る免疫学

私の母は「病気の問屋」みたいにしょっちゅう病気になる人でしたので、神経質な人がいかにたやすく病気になるか、 骨身にしみて知っていたため、心身医学に興味がありました。
大学を出て研修医を2年やるなかで、ガンもリウマチも治せない現実を目の当たりにしたのがきっかけで免疫学の 研究の道を選びました。ただ、免疫学は細分化されており、実際のところ病気にあまり役立っていないと感じました。

私は、身体と命を全体的にとらえ、本当に病気を治す免疫学の研究を進めてきました。そして、学生の頃に学んだ故、 斉藤章先生や外科医の福田稔先生との運命的な出会いもあり、自律神経の白血球支配の法則を解明するに至りました。
人間の病がどういう原因で起こるのか、全体的な仕組みが見え、どうして今の医学が病気を治せないのかが分かって きたのです。

敵にも味方にもなる白血球

病院でもストレスが体に悪いといわれますが、どのような仕組みで体に悪いのかを説明されることはないと思います。 しかし、「自律神経が白血球を支配している」と考えるとはっきりします。
ケガをすると、侵入した細菌を処理するために白血球の顆粒球が増えます。顆粒球は活性酸素で菌を処理する働きがありますが、 ストレスで交感神経が刺激されても顆粒球が一気に増えます。

顆粒球が過剰になると、粘膜や皮膚、毛根に押しかけ、悪さをしない菌にまで活性酸素を放出します。そのため、粘膜や 組織に炎症や破壊が起きてしまうのです。だからストレスや寝不足が続くと、歯周病、痔、胃潰瘍、潰瘍性大腸炎、突発性 難聴など、顆粒球による炎症の病状が起こってきます。
思春期で悩みを抱えると顔じゅうにニキビができるのも、増えた顆粒球による炎症です。

逆にリラックスすると副交感神経が刺激され、白血球のリンパ球が増加し、適度に増加することで免疫力が上がります。
ただし、運動不足などで副交感神経に偏り過ぎると、リンパ球が多くなり過ぎます。するとアレルギー反応となり、 リンパ球による反応が過剰に起こることになります。布団の上で子供が「ゼーゼー」いう、すぐじんましんが出るなどの症状です。
扁桃腺が腫れるのもリンパ球の多い症状です。極力、甘いものを控え、子供は適度に外遊びをして体を動かすことが 重要ですね。

2つのエネルギー系の話

私たち人間は、「ミトコンドリア系」と「解糖系」という両方のエネルギーバランスで健康が保たれています。
マグロ、カツオ、ブリなど赤身の魚はいつも泳いでいます。そのため、赤身の魚は持続的にエネルギーを作る「ミトコンドリア系」が 多く存在しています。
タイ、ヒラメなど白身の魚は普段は泳ぎませんが、餌が来たときにだけ瞬発力で飛びつくため、一時的な力を生む「解糖系」に拠っています。

この人に聞きたい バックナンバー